重要要点とポイントの整理(E経営法務)

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経営法務の重要要点とポイントの整理についてです。

その1 組織編制

M&Aについて
M&Aは元々2種類である。(1)Merger:合併と(2)Acquisition:買収である。
M&Aには更に広い意味で(3)会社分割という方法もある。

さらに資本・業務提携といった、発展型の手法が幾つも登場している。 大きく「企業間の事業再編」と捉えれば分かりやすい。

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(1)Merger:合併について
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合併には2つある ①吸収合併 と②新設合併 である
~実際にはほとんどが吸収合併で、新設合併は少ない~

◆吸収合併と新設合併の概略
①吸収合併 : A社がB社を吸収する   A ← B ⇒  A社 (B社は消滅)
②新設合併 : 新しくC社を設立     A + B  ⇒  C社 (A社B社は消滅)
〈特徴〉~消滅会社の株主は、存続会社の株主となる~

①吸収合併では、A社がB社の全部を取り込む
②新設合併では、新設C社には、旧のA,B社の株主も含まれる。
合併対価は株でなくても良い。
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(2)Acquisition:買収について
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買収には2つある ①事業譲渡 と ②株式取得(方法は6パターン)
まずは、事業譲渡について。

◆事業譲渡:B社の一部の事業をA社に譲り渡すもの。
◆株式取得の6パターン

株式交換:B社の株を買い取り、その株主にA社の株を発行し「完全子会社」
株式移転:同様に、B社の株をA社に移転して、「完全子会社」する方法
株式譲渡:譲渡制限がある場合が多い。この場合、取締役会の決議(取締役会設置会社)もしくは株主総会の普通決議が必要。 優良会社の買収では「のれん」代が発生。不良会社なら不要資産(簿外債務等も)でも引継ことになる
第三者割当増資:新株を発行し、買収企業に引き受けてもらう方法。資金注入で財務基盤強化となる。
TOB:株式公開買い付けのこと
MBO:マネジメント・バイ・アウト。経営陣による買収のこと

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(3)会社分割について(広義のM&A)
会社分割にも2つある。ある事業部門を分割・独立させて、新会社を作る手法。
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◆吸収分割と新設分割
〈特徴〉~合併と似ているので注意! 但し、株主の地位は移転しない~
②吸収分割 : A社がB社の一部を取り込む (B社は消滅しない)
②新設分割 : A社の1部門を独立させてC社をつくる (A社を分割会社、C社を新設会社という)

【注意:(過去問より)】

会社分割の特徴を事業譲渡の場合と比べる問題での「キーポイント」は、次のとおり。
会社分割の大きなメリットとして「契約関係を包括して継承できる」点がある。
事業譲渡では、個々の契約者の合意が必要であり、ここに本質的な違いがある。

分割契約内容を6か月記録に残す義務がある
会社分割では、債権者保護手続きをとって包括的に債務を移管できる
事業譲渡では、債務の移転に個々の契約者の合意が必要(前述)
会社分割では、事業の許認可をそのまま承継できる
事業譲渡では、事業認可は同種事業がなければ再取得する
承継資産の対価は、分割、事業譲渡とも金銭・株式・社債等で可
これ以外にも、「資本提携」「業務提携」という言葉を聞きますが、広い意味での企業間提携といわれています。

いずれも、経営権が移動する企業間の再編成ですね。

 

その2 会社法

会社運営上、特に重要な法律「会社法」をまとめます。
尚、上場会社には「金融商品取引法」という「投資家」の保護を目的とした法律も大事となる。

会社法による「会社の位置づけ」
自分の会社は、大会社なのか、中会社なのか、小会社なのか
まず根本的な関心事について、会社法ではどう位置づけているのか

  • 大会社:資本金5億円以上、負債200億円以上
  • それ以外:

会社法では、大会社とそれ以外(中小会社)という分類になっている。

商法による規定
会社法で大会社以外(中小会社)の会社のうち、小会社は「商法」の規定を用いる 【さらに、財務省法人税率の特例による「普通法人」の定めでも同じで、法人税本則税率19%のところ軽減税率15%を適用している】

  • 小会社:資本金1億円以下、負債200億円未満

よって、資本金と負債額による会社分類は次表のとおりとなる。
(負債額200億円で区分線が引かれている理由は、昭和49年の商法改正時にそうなった、としか分からない)

 (資本金)

5億円

1億円

    大会社(*会計士監査必要)   大会社(*同じ)
  大会社(*同じ)
     小会社   大会社(*同じ)
           200億円     (負債)

さらに注意を要するのは「中小企業基本法」での規定です。

下表のように①中小企業者と②小規模企業者の範囲を規定している。
(中小企業庁HPより)

  業種       中小企業者 小規模企業者
資本金・出資額 常時の従業員数  常時の従業員数
 製造業・建設業・運輸業
 及び その他
  3億円以下   300以下   20人以下
 卸売業   1億円以下   100以下     5人以下
 サービス業   5千万以下   100以下     5人以下
 小売業   5千万以下     50人以下     5人以下

◆もう一つ重要なものに「金融商品取引法」がある。

金融商品取引法は、主に上場企業の投資家保護を目的として、法整備されたもので、

会社法の規定に上乗せする形での書類提出を義務づけるものです。

株式公開会社に対し 有価証券報告書の提出 3か月以内 内閣総理大臣へ
タイムリーディスクロージャー 重要事項 証券取引所経由
インサイダー取引の禁止 罰則規定
役員等の会社株式売買制限 6か月以内の利益化禁止

有価証券報告書とは、下記について事業年度終了後「3か月」以内に電子提出するもの

  • ①企業の概要
  • ②事業の状況(業績)
  • ③提出会社の状況(株式の総数・新株予約権等の状況)
  • ④経理の状況(連結財務諸表・財務諸表)

このため、投資家に対して「IR活動(投資家向けの企業情報の発信」が重要になっている。

【問題 :1代表取締役の解職手続き 2取締役の解任手続き を問う】
(解答)
1代表取締役の解職手続き ⇒ 取締役会の決議事項(過半数) / 株主総会 必要なし
2取締役の解任手続き   ⇒ 取締役会 権限なし / 株主総会 普通決議(過半数)
(注意)
株主総会の特別決議についても押さえておく。

その3 独禁法 下請法 消費者保護法 景表法

前回は会社法についてまとめましたが、今回は事業活動をしていく上で重要となる法律についてまとめます。 まずは「独占禁止法」「下請法」そして「消費者保護法」「景表法」の4つがあります。

独占禁止法
市場メカニズムを『公正かつ自由名競争』により正しく機能させ、消費者の利益を守る目的で、主に6つの禁止行為があります。

  • 1)私的独占の禁止
  • 2)不当な取引制限(カルテル、入札談合など
  • 3)不公平な取引方法の禁止
  • 4)事業者団体の規制
  • 5)企業結合の規制
  • 6)独占的状態の規制

(1)私的独占の禁止
①市場を独占する目的で、他の事業者の活動を阻害したり、新規参入を阻止したりすること
②健全な競争が行われない状況を作り出すこと。例えば、不当な値引販売など
(2)不当な取引の制限
①カルテル 懇談会の場で、同業者同士が話をするなど、色んな場面での価格調整を取れる行為を含む
②入札談合 入札に加わらないよう要請なども含む
(3)不公平な取引方法(公正取引委員会指定)
①共同の取引拒絶
②再販売価格の拘束
③優越的地位の乱用
④競争制限的な企業結合
(4)、(5)、(6)については当面(略)

下請法
下請法の適用となるのは、次の4つ
親事業者の義務と下請業者に対する禁止行為を定めている。
①製造委託
②修理委託
❸情報成果物の作成委託(コンピュタープログラム、音声、デザインなど)
④役務の提供委託(事業者が業務として行っている役務サービスの提供)
             (注)建設工事については、建設業法が適用となる

*下請法における親事業者の義務
⇒書面の交付・作成・保存・代金支払の期日設定・支払遅延時の利息など
*親事業者の禁止事項
⇒受取拒否・代金支払の遅延・減額・返品・買いたたき・購入利用の強制・報復措置など

【特定商取引法】
訪問販売、通信販売、インターネット販売などにおける消費者トラブルの防止を目的としている。
⇒広告の表示義務、誇大広告の禁止などが、当面の重要ターゲット
*特に、インターネット通販対策が最近の重要テーマとなっている。
(例)
①あるボタンクリックをすると有料申し込みになるケース
②顧客が内容を十分確認出来ずに申し込みをしてしまう行為への行政処分

消費者保護法(主に3つ)

「消費者保護法」といわれる法律は、主に3つの法律から構成されていて、「消費者基本法「消費者契約法」「特定商取引法」 というのがあります。

  • 消費者基本法」とは、消費者の利益の擁護を目的としている
  • 消費者契約法」とは、労働契約を除く全ての契約で、消費者の不利益の防止を目的としている。
  • 特定商取引法」とは、訪問販売、通信販売、インターネット販売などでのトラブル防止を目的としている。

景表法

不当な表示や過大な景品等による、詐欺的な商取引を誘発するのを防止するもの。
柔らかくいえば、「誤解を与えるような商品・サービスの表示から、一般消費者を守る」ための法律です。
顧客の関心を引くために工夫が度を過ぎると、この法律ににっかかる恐れがあります。
(例)
優良誤認・・・品質やサービス内容で、誤解を与えるような表示の禁止(「産地偽装」の例や、例えば「とんかつ定食」を「ヒレカツ定食」と表示するようなケース)
有利誤認・・・今だけ大特価、NO1などの表示
その他 ・・・不動産のおとり表示、ネットビジネスのおとり表示など

 

その4 知的財産権

「知的財産権」とは、特許庁のホームページによると、次のように書かれています。

人間の幅広い知的創造活動の成果について、その創作者に一定期間の権利保護を与えるようにしたのが知的財産制度です。知的財産権は、様々な法律で保護されています。

さらに「知的財産権」とは、同じく特許庁ホームページによると

第2条2 ・・特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利・・

診断士1次試験では、これら法律の判決事例などがよく出題されているので、まず、全体の基本確認事項、次に個々に分かりやすい例を書き留めます。

1 知的所有権の基本事項

(1)産業財産権(4種類)

 種 類  存続期間   登録料・特許料(毎年)    特記
特許権  出願・20年  初0.23万~最終6万/年 審査有  未納消滅、期間延長可
実用新案  出願・10年  初0.22万~最終2万/年 無審査  未納消滅、  -
意匠権  登録・20年  16,9万円/年 初3年半額   未納消滅、  -
商標権  登録・10年 一括 数十万円+事前調査費等  一括納付、永続更新可

* 特許料・登録料の他、出願時に出願料・審査請求料、また行動発生の都度料金が発生
* 東京五輪のロゴの場合、事前調査費5000万円

(2)その他(著作権・育成者権など)

  種 類    存続期間    内容等
 著作権  著作物の創作発表時から
 著作者の死後50年
コンピュータプログラム
データベース・コンテンツ等
著作物・論文など
 育成者権  農産物の品種登録の権利  品種改良した成果の種など

(3)その他

細かくは、著作者人格権、著作財産権(複製権、上映権、翻訳権など)、肖像権、恩多-ネットドメイン権、回路配置利用権などが有る。

2 特許等に関する話題、一口メモ

特許権

出題が多い。「特許権侵害」についての設問に注意

  • 「切り餅の側面スリット」に対し「上面のスリット」が特許侵害となった件

実用新案権

  • 実用新案は、侵害があってもすぐに差止できない
  • 利点は実体審査がないので、登録までが早い(1~2か月程度)
  • 物品の(形状・構造・組合せ)に該当する場合のみ(製造方法などは特許)
  • 特許対象となる小発明は、実用新案登録3年以内なら特許申請可
  • 健康サンダルのような小発明が、特許とも実用新案ともなる。

意匠権

  • 仮に相違点が多くあっても、特徴的な部分を真似ていれば意匠権違反となる
  • 保護されるのは工業デザイン(大量生産できるデザイン)だけなので注意

商標権

  • ipad商標侵害の話題
    アップル社の敗訴例: アップル社の発売前に中国本土で商標登録されていた件

著作権

  • 著作物(あらゆる形態の制作物)を創作した時点で発生する権利
  • 著作権の期間は50年(映画のみ70年)
  • 海賊版DVDの販売
  • ネット上に画像の無断使用
  • 有料ビジネスソフトの無断インストール販売
  • WEBサイトの真似、コンテンツの無断使用

3 外国への出願事情

「属地主義」に基づき、パリ条約で特許独立の原則が確認されている。

 

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