平成28年度過去問の復習(E経営法務)

★「経営法務」解法のポイント
全部で18問(実質20問)あり、これを60分で解くので、一問あたり3分ジャストと時間的には全ジャンルの中で一問あたりの時間配分が一番長いです。

問題文が長く、法律用語と言い回しでスラスラと読むということにはなりません。知識の有無に依存する部分が大きいので、疲れないようさらりと意図をつかむよう解くのがポイントかと思います。

自信がある問題では、あまり他のセンテンスを読まないほうがいいかもしれません。

平成28年度の「経営法務」のキーワード
キーワードを簡単に解説すると、次のようになります。

問1 株式会社の役員についての問題
>監査役の任期
>監査役の解任と株主総会の特別決議
問2 株式譲渡制限会社の「株式譲渡」の承認請求について
>株式譲渡の「みなし承認規定」について
>譲渡諾否の通知の期限
>否認の場合の自社で買い取る旨の通知期限
問3 会社分割と事業買収について
>買収額の妥当性と買収リスク
>公正取引委員会への届出義務がある事業譲渡会社と譲受会社の規模
問4 「中小企業における経営継承の円滑化」に関する法律について
>遺言がある場合の「相続遺留分計算(遺留分侵害額計算)」
>同上での除外合意と固定合意がある場合での算定額
問5 倒産手続きについて
>再建を目指す(①民事再生②会社更生)と担保権の実行の可否
>清算する(③破産④特別精算)と否認権の行使の可否

問6 実用新案の登録技術評価における「有効性の評価」について
>特許との相違 ①審査請求制度がない(特許は申請後に出願審査請求が必要)
>同      ②権利侵害の裁判は「技術評価書」の提出義務
>同      ③権利期間10年(特許は20年)
問7 特許法の一部改正(H27)
>職務発明の特許の帰属を使用者が選べる(使用者or従業員)
>特許料の改定
問8 意匠登録
>特許と異なる点は販売後でも取得可能なこと
>意匠登録できない例(花火などの無体物、不動産、固体以外のもの)
>同        (目で確認できないもの)
>同        (ロゴマークやCGなど)
問9 秘密意匠制度とは?
>3年を限度として公表しない
問10商標登録
>ロゴマークなど
>出願カテゴリー45区分
>商標の類否判断の3要素(外観、名前。イメージ)
>全体と要部での判断

問11不正競争防止法と商品等表示
>周知表示混同惹起行為(著名な商品と同じ会社だと誤認する表示や行為)
>著名表示冒用行為(著名な商品によく似た表示)

問12不正競争防止法における営業機密に該当する3つの要件
>秘密管理性
>有用性
>非公知性
・図利加害目的での情報収集は侵害罪
問13ネットショップでの注文における契約の成立
>受注確認メールの送受時
>「画面上で申込承諾の表示」のみで契約成立の特例ができ、悪質利用が可能となった。
>承諾のメール送信後は、申し込み者の死亡でも契約成立
問14債務者の詐欺行為と債権者の権利行使
>詐欺行為取消権(詐欺行為から20年、気づいてから2年以内)
問15英文契約書の読み方
>Tax haven(租税回避地)
>withholding(源泉徴収)

問16業務委託契約(法律用語ではなく、請負契約・準委任契約のこと)
問17委託者指図型投資信託の構成
>投資家(受益者)、信託銀行(受託者)、投資信託委託会社(委託者)の3者
>共有不動産の利用権は持分比率関係なし
問18上場準備での株式移動等に関する規制について
>ストックオプション(役員・社員の報酬としての新株予約権)は規制対象外
>上場前の2年間に特別利害関係人が株式を譲り受けた場合は「申請の有価証券報告書」に記載必要

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◆下記にシーワードの解法を記す◆

平成28年度一次試験(経営法務)の各問キーポイント分析です。

まずは、問1から問10まで 以下のとおりです。

 

問1 株式会社の役員についての問題
☞キーワード・・・監査役の任期と解任、取締役の任期と解任

➡監査役の任期
●任期は4年(定時株主総会の終結の時まで)
●「定款で定めれば」and「譲渡制限会社」ならば・・・任期を10年以内に伸長できる(取締役と同じ)

➡監査役の解任(監査役は損害賠償請求可)
●「正当な理由がある場合」・・・
●「正当な理由がない場合」・・・株主総会の特別決議(議決権総数の過半数出席、定款で定めれば3分の1以上の出席で、2/3以上の議決

 

問2 株式譲渡(株式譲渡制限会社)の承認請求について

☞ポイント・・・株式譲渡を譲渡する場合の「みなし承認規定」で、みなし承認される2つのケース

➡会社側が一定期間。承認行為を怠った場合に「みなし承認」される
●2週間以内(譲渡承認請求の諾否の通知)
●40日以内(否認の場合に、自社で買い取る旨の通知)

問3 会社分割と事業買収について

➡会社買収における大小さまざまなリスクについて
●売却額の妥当性/権利義務の引継リスク/瑕疵や虚偽に対するリスク/契約書のリスク/買収後の運営リスクなど
➡事業譲受けの公正取引委員会への届出
●事業譲受けする会社の国内売上高200億円以上で、譲渡する会社が30億円以上の場合に届出必要。(ただし、同一企業グループ内では不要)

 

問4 「中小企業における経営の承継の円滑化」に関する法律

☞相続遺留分計算(遺留分侵害額計算)における除外合意と固定合意
➡遺留分と遺留分侵害額の計算について
●通常の法定相続と異なった分け方をする。(遺言のあるケースに限る)
●相続人が最低限もらうことができる保証をした制度

 相続人        相続財産の遺留分
(除外合意や固定合意がなければ生前贈与含め相続額全額)
 配偶者と子/子のみ   全相続遺留分の1/2
 配偶者と直系尊属(父母)     同上
直系尊属のみ(父母)    同    1/3

➡除外合意と固定合意がなされた時の遺留分侵害額の計算方法について
●自社株の生前贈与が除外合意となれば、遺留分は1.4億円 この半分が遺留分相続となり、通常相続以外を遺言していても法的に相続できる。配偶者と子供が4人ならば、7000万円を法定で分け子は1750万円となる。遺言での取り分と比較して、足りない部分が遺留分侵害となるが、問題文では2000万円遺言であるので、遺留分侵害は0。

●自社株の生前贈与がその時点での固定合意とすると、以後の自社株上昇分のみ遺留分から除外となる。 よって、相続遺留分は図の場合3.8億円となり、この半分1.9億円を法定で相続します。 配偶者9500万円、子(4人)は2375万円となる。 遺言で2000万円の預貯金を相続するD子は375万円の遺留分侵害となる。

 

問5 倒産手続きについて

☞倒産手続きは大きくわけて2つ@2パターンの4ケースある。これ以外に任意整理があるが、本問では省略
➡再建を目差す
●①会社更生②民事再生
➡清算する
●③破産④特別清算

手続き  担保権の実行  否認権行使  相殺権の行使期限
 民事再生  できる  できる  債権届出期間内
 会社更生  自由にできない  できる  債権届出期間内
 破産  できる  できる  期限なし
 特別精算  できる  できない  期限なし

(注1)●担保権とは、競売などの抵当権等を行使する権利。会社更生では、担保権があるからといって、自由に競売できない
(注2)●否認権とは、法的処理の前に優先的に債務返済を特定の人にした場合を否認すること

問6 実用新案登録技術評価について

実用新案技術評価とは、実用新案の「有効性を評価」するもの
➡実用新案は出願すれば様式的な審査のみでそのまま登録される。出願日から10年間は独占的に実施することができる。よって怪しいのも登録される。
●第三者への権利行使(侵害の訴え)は、同評価書の提示を義務づけている。

実用新案 特許
図面 必須 任意
登録に要する期間 半年 2~3年
審査請求制度 なし あり
権利期間 10年 20年・延長あり
権利行使(侵害裁判) 技術評価書の提出後 不要
裁判で負けたら 損害賠償する 責任はない

問7 特許法の一部改正について

☞平成27年の改正では、知的財産の適切な保護、活用を実現し、我が国のイノベーションを促進するもの。
➡①職務発明の特許の帰属を使用者か従業者か、使用者が選べることになった。また②特許料を改定した。
●③特許法条約及び商標法に関するシンガポール条約実施のための規定整備である。

問8 意匠登録について

☞意匠登録は、偽物・コピー品などの販売を法的に排除するもの(特許法と異なり、販売後でも意匠権をとることが可能)
➡ 意匠登録可能な例
●物品(及び物品の一部分)のデザイン
●物品(及び物品の一部分)+模様の結合デザイン
●物品(及び物品の一部分)+模様+色彩の結合デザイン
➡ 意匠登録できない例
●無体物(花火など)不動産(建築物等)固体以外(アイスクリームは固体とする)肉眼で見えないもの(粉状のもの)
●CG、アイコン、ロゴマークなど物品から離れたもの(携帯電話の液晶画面はよいとする)
●ネクタイの結び目など、物品自体のデザインではないもの
●機械の内部構造のように目で確認できないもの(但し、冷蔵庫・ピアノは見えるのでよい)

問9 秘密意匠制度について

☞3年を限度として公表しない、というもの
➡自動車メーカーによくある話
●新デザインが数年前から決まっていて、発売前にオープンになるとインパクトが薄れる、という悩みの解消が目的。

問10 商標登録について

☞商標とは?
➡簡単にいえば、商品やサービスのロゴや文字(名前)のこと
●区分(出願のカテゴリー)が45ある
●商標登録の手順
①すでに登録されていないかの確認「特許庁のHP」
②どの区分で出すか調べる
③必要書類の準備「ダウンロード」
④特許庁に直接電話して「細部」を確認する
⑤出願する(郵送または持参)・・・登録まで6か月かかる

➡商標登録出願の拒絶通知
●商標の類否判断基準は、2つの商標が、よく似た商品に使われた場合に、「どっちがどっち」の混同してしまうか否か がポイント
●類否の判断は、3要素(①外観②名③イメージ)のどれか一つが同じならば「類否」となる。
●類否の判断は、全体と要部(中心的な部分)で行う。

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平成28年度一次試験(経営法務)の各問キーポイント分析です。

問11から問18までのキーワード(ポイント)を中心にまとめます。

 

問11 不正競争防止法に規定する商品等の表示についての問題
☞キーワード・・・周知表示混同惹起行為と著名表示冒用行為の違いについて

➡周知表示混同惹起行為
●著名な商品表示と類似の表示で、あたかも著名な商品と同じ会社だと誤認してしまう表示の仕方
●グッチの名前を使って、日本の地方都市で「スナック・グッチ」の看板をあげる場合でも混同惹起行為となる。

➡著名表示冒用行為
●他人の「著名な表示によく似せた表示」を勝手に使うこと
●高級時計のロレックス「ROREX」の某国製模造品ロラックス「RORAX」が露天で安く売られていた。ロレックス社が訴えれば冒用行為となる。
●大幸薬品の「セイロガン糖衣A」に類似した正露丸糖衣錠AAという商品名で、損害賠償を命じられた製薬会社があった。

問12 不正競争防止法の営業秘密に関する問題
☞キーワード・・・秘密管理性、有用性、非公知性、図利加害とは?

➡不正競争防止法の営業機密に該当する、3つの要件は①秘密管理性②有用性③非公知性である。
●秘密管理性とは・・会社としてアクセス制限やマル秘表示等の秘密管理措置がなされている事
●有用性とは・・・脱税情報や公序良俗に反する情報は除外する事
●非公知性とは・・・保有者の管理下以外で、入手が不可能(刊行物等での記載がないことなど)な事
●図利加害(自己または第三者の利益となるよう図ること)目的での情報取得は営業機密侵害罪となる。

問13 契約の成立について
☞キーワード・・・インターネットショップで購入者との契約(注文)が成立する条件は?

➡注文画面から申し込みがあり、「受注したという確認メールが購入者に届いた時点で契約が成立する。(電子契約法)
●注文確認画面が未設置なら契約不成立
●確認メールが届いた時点で契約成立であるが、確認メールを発送後に申込者の死亡が確認されても効力は成立する。
●「遠隔地」に対する契約については発信主義とするのが本来の法の精神だった(現在変更された)ので、特例を設けて「画面上で申し込みを承諾した旨の表示」でも可とし、悪質事業者の手口に利用されやすいので注意する。
●「遠隔地」に対する契約は、申込者が申込後死亡して、それが承諾の発信前にショップ側が知ったなら申込は効力を失う。

問14 債務者による詐欺的な行為に対する債権者からの権利行使について
☞キーワード・・・詐害行為取消権

➡債権者が債務者の法律行為を一定の要件の下に取り消してしまう権利
●債権者が気づいてから2年以内、又は債務者の詐害行為から20年間は取消権が有効である(これを過ぎると時効)
●債務者が勝手に債権者の一部の者に代物弁済した場合は、詐害行為となる

 

問15 英文契約書の読み方
☞キーワード・・・Tax haven(租税回避地・・・一定の税金が著しく軽減される国や地域)、外国企業への知的財産使用ライセンス契約

➡withholding・・・源泉徴収
●知的財産の使用料に対する課税に有利な国での現地法人設立には「Tax haven」面での注意を要する。

 

問16 経済産業省の情報システムの企画・開発のモデル契約について
☞キーワード・・業務委託契約と 請負契約、準委任契約

➡間違いやすいが、業務委託契約とは法律上にはないフレーズで法律上は(請負契約、準委任契約)のことである。
●請負契約では、請負人(ベンダ)は仕事の完成の義務を負う。そして瑕疵担保責任を負う
●準委任契約では、請負人(ベンダ)は完成の責任は負わない。しかし善管注意義務違反があった場合は、債務不履行責任を負う。

 

問17 共有と契約型投資信託(委託者指図型、非指図型)等について
☞キーワード・・委託者指図型投資信託は、投資家(受益者)、信託銀行(受託者)、投資信託委託会社(委託者)3者で構成。

➡投資家から信託銀行が金を集めて保管・管理をし、投資信託委託会社が運用を指図する。
●委託者指図型投資信託の受益権は株式と同じで、共同相続人らの共有となる。
●共有不動産にについて、持分比率に関係なく、利用権は同じ。但し、共有物の状態変更や処分等についての発言権は異なが、全員の協議は必要。

●共有不動産に対し、実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し、単独でその持分移転登記の抹消登記手続きをすることが可 (???)

 

問18 上場準備中に行われる株式移動等に関する規制について
☞キーワード・・新規上場申請者の株主の開示義務、新規取得の株の売却(期限の有無) ストックオプション 特別利害関係人

➡新株予約権のうち、役員や従業員等に報酬として割り当てた新株予約権のことを特に「ストックオプション」という。上場後直ちに売却してキャピタルゲインを得ることが可能となる。
●新規上場申請者の直前事業年度の末日から起算して2年前から上場日の前日までに特別利害関係人が株式を譲り受けた場合は、「新規上場申請のための有価証券報告書」に記載する必要がある。

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以上で終了です。