★「財務・会計」解法のポイント
全部で18問(実質25問)あり、これを60分で解くので、一問あたり2分ちょっとの時間配分が必要となります。
本分野では、①「1分程度で分かる問題」、②「1分程度で分かるように思えて間違いやすい問題」、③「少し時間をかけて考えないと解けない問題」に分かれるので、③のタイプへの対応として、「後回しにする」という選択がよいかもしれないですね。
余った時間でもう一度見直し、とばした問題を時間を見ながら一つずつ潰すという回答方法がよいではないか、と思います。
平成28年度の財務・会計のキーワード
キーワードを簡単に解説すると、次のようになります。
問1 「簿記3級」 先入先出法による売上原価について
問2 「簿記3級」 売上値引、売上戻り、売上割引、売上割戻で売上控除対象外はどれか?
問3 「簿記上級」 所謂「のれん」の扱いについて
問4 「簿記上級」ファイナンスリースについて
問5 会社法の定めによる「増資」と「資本金」「繰越利益剰余金」の取扱
問6 原価計算基準上の原価に関する記述
(ア)「盗難損失」は原価に参入か否か
(イ) 財務諸表表示は「全部原価」と「直接原価」のどっち?
(ウ)「実際原価計算」と「標準原価計算」の違いは?
(エ)「総原価」と「製造原価」の違いは?
問7 直接材料における価格差異とは何?
問8 全部原価計算と直接原価計算についての営業利益と損益分岐点比率について
問9 「貸借対照表」と「損益計算書」が与えられている。この財務諸表について
(1)キャッシュ・フロー計算書での「+」要素と「-」要素とは?
・・・「売上債権の増減」「減価償却費」「固定資産の増減」「仕入債務の増減」
(2)貸借対照表と損益計算書から読み解く財務分析
問10直接金融と間接金融
問11 リスク中立的とリスク回避的な投資家の効用関数(対数関数と指数関数)
問12 資本資産評価モデル(CAPM)について
(1)β=-1,1,2の意味と期待収益率について
(2)CAPMによる株式の期待収益率を求める
(市場ポートフォリオの期待収益率8%、無リスク資産の期待収益率3%、実行税率1.4)
問13 企業買収に関する略語
①KPI ②LBO ③MBO ④TOBとは
問14 加重平均資本コスト(WACC)
自己資本コスト と 他人資本コスト と 限界税率について
問15 投資案件と予想収益率の連続データ表より算出
(1)共分散と相関係数について
(2)予想収益率の期待値、分散、標準偏差、相関係数
問16 配当割引モデルによる企業価値の推定について
問17 内部収益率法を用いたプロジェクトの順位付けについて
問18 ポートフォリオ理論
(1)無リスク資産が存在しない場合の特徴
(2)無リスク資産が存在する場合の特徴
◆下記にキーワードの解法
平成28年度 第一次試験 財務・会計問題のキーワード等各問について、学習を深めていきます。
~~~~~~~ 第1問から5問まで ~~~~~~~
第1問 簿記。先入先出法による売上原価について
第2問 簿記。売上値引、売上戻り、売上割引、売上割戻で売上控除対象外は?
第3問 簿記。所謂「のれん」の扱いについて
第4問 簿記。ファイナンスリースについて
第5問 会社法の定めによる「増資」と「資本金」「繰越利益剰余金」の取扱い
各問のショートコメントは次のとおり
~~~~~~~ (下記にショートコメント) ~~~~~~~
先入先出法による売上原価について
第1問
先入先出法による、ある商品Aの6月の仕入れと売上から売上原価を求める問題。
簿記3級などの問題に対応した一般的な解法は頭においておき、3分以内で求められた解答に必要な部分だけを計算します。要点だけをピックアップします。
当ケースでの必要解答部分
①5日の売上に対応する仕入れ 10個-200円、20個-190円
②20日の売上分については、 20個-190円
以上より、 9600円
売上値引、売上戻り、売上割引、売上割戻
第2問
売上控除とならない項目はどれか
ア)売上値引 イ)売上戻り ウ)売上割引 エ)売上割戻
【メモ】
売上値引、売上戻り、売上割戻 とも同じ仕訳となる。
売上値引(ディスカウント)、売上戻り(返品)・・・・・簿記3級 売上割戻(キックバック) ・・・・・簿記2級 ~~~~~~~ ~~~~~~~ ~~~~~~~ 売上割引は 売上控除とならない ・・・・・・・ 簿記2級 |
「のれん」の扱いについて
第3問 「のれん」に関して
「のれん代」(営業権)の扱いの問題 (簿記2級レベル)
〇「のれん」は日本発祥で、買収企業の純資産額と買収価格の差のこと
〇のれん代が「マイナス」の時もあり、その場合、特別利益計上する
〇償却期間は20年以内の償却
ファイナンスリースについて
第4問 「ファイナンス・リース」とは?
ファイナンス・リースが資産取得という本質を問う(簿記2級レベル)
〇オペレーションリース(車など)と異なり、資産の取得と同じ扱い
仕訳の例で違いを見る
1)レンタカー:毎月3万円でリース (オペレーションリース)
リース料 30,000 / 現金 30,000
2)コピー複合機:毎月2万円総額80万円のリース契約
備品 800,000 / 長期借入金 800,000
★毎月の支払い時の仕訳は・・・
長期借入金 20,000/ 預金 20,000
★期末決算時の仕訳は・・・・・
減価償却費 ▲▲ / 備品 ▲▲
会社法による「増資」と「資本金」、「繰越利益剰余金」
第5問 貸借対照表から期中資本金と繰越利益剰余金を求める
・・・・・・・☞ 簿記2級レベル
(期首)純資産の部 単位千円 Ⅰ 株主資本 1 資本金 80,000 2 資本剰余金 (1)資本準備金 1,000 3利益剰余金 (1)利益準備金 5,000 (2)その他 繰越利益剰余金 1,20087,200(期中) 1 増資 21,000千円 資本金は会社法が定める最低額 ➡増資の1/2 10,500千円 株式募集の費用 150千円 ➡株式交付費 2 株主総会で繰越利益剰余金の配分 ■設問1 期中取引終了時点の資本金の金額は? |
解法 設問1(資本金)
増資により「出資の半額(会社法最低額)」10,500千円増 90,500千円
★通常は出資金全額が資本金となるが、「最低額」は半分
設問2(繰越利益剰余金)
利益準備金は「配当の1/ 10」で80千円
繰越利益剰余金取崩 ●● / 利益剰余金+配当金+積立金●●
●●=80+800+180 =1,060円
繰越利益剰余金 = 1200 -1060 =140 円
以上です。 第6問 ~第9問までを次回とします。
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~~~~~~~ ~~~~~~~ ~~~~~~~ ~~~~~~~
~~~~~~~ 第6問から10問まで ~~~~~~~
第6問 原価計算基準上の原価に関する記述
ア)「盗難損失」は原価参入なのか非参入なのか、を問う
イ)「全部原価」と「直接原価」、財務諸表の表示で認められているのは?
ウ)実際原価計算と標準原価計算の違い
エ)総原価と製造原価の違い
第7問 直接材料の価格差異
第8問 全部原価計算と直接原価計算についての営業利益と損益分岐点比率
各問のショートコメントは次のとおり
~~~~~~~ (下記にショートコメント) ~~~~~~~
原価計算基準上の原価に関する記述
第6問
先入先出法による商品Aの6月の仕入れと売上から売上原価を求める問題。
簿記3級などの問題に対応した一般的な解法は知っておく。その上で3分以内で求められた 解答に必要な部分だけを計算し、要点だけをピックアップ。
ア)原価参入対象と非参入対象のコスト
原価に入れない費用(全部原価計算:財務諸表対象)
①販売費と管理費
②貸付借入の財務費
③災害・盗難などの損失コスト
イ)財務諸表の表示
全部原価計算….現行制度上、外部報告用の財務諸表の作成に利用
直接原価計算….変動製造原価だけで製品原価を計算、利益管理用に内部利用
全部原価計算と直接原価計算の違いのイメージ
*直接原価計算では、固定製造原価を製品原価からはずし、期間原価とする
全部原価計算
売上高(千円) 10,000 販売費・一般管理費 2,000 |
直接原価計算
売上高 (千円) 10,000 |
ウ)実際原価計算と標準原価計算の違い
「実際原価計算」…..実際にかかった費用を用いて計算
「標準原価計算」…..事前の見積もりで標準コストを計算
(注意!)実際原価計算でも、予定価格が使われる
~消費量が実際であれば、価格が予定でも実際でも「実際原価」となる。~
「実際原価計算」=予定価格*実際消費量 or 実際価格*実際消費量
「標準原価計算」=予定価格*予定消費量
~「実際原価計算」でも予定価格を使用する(「実際」と「予定」価格の差を「原価差異」)
エ)原価計算基準上の総原価と製造原価
総原価=製造原価 + 販売管理費
>製造原価・・・・・製造・販売するための総費用
>販売管理費・・・・アフターサービス費用を含む
直接材料の価格差異
第7問 直接材料のデータから価格差異(有利差異・不利差異)を求める
消費数量 | 価格 | |
実際 | 820kg | 490/円 kg |
標準 | 800kg | 500/円kg |
有利差異 実際<予定なら → 有利差異
不利差異 実際>予定なら → 不利差異
差異には「価格差異」と「数量差異」がある。図に書くとよく分かる。
500円 | 価格差異(10*820)= | 8200 |
490円
価格 |
⇒
数量差異 |
|
800k k 標準消費量 | 820k実際消費量 |
全部原価計算と直接原価計算による、営業利益・損益分岐点
全部原価計算 と 直接原価計算 との関係は次式のとおり
全部原価=直接原価-期末在庫品固定費+期首在庫品固定費
〇全部原価計算の利益=直接原価計算の利益となるのは
販売量=生産量 かつ在庫量変動がないケース
〇全部原価計算の利益>直接原価計算の利益となるのは
生産量>売上量 となり在庫量が増加するケース
〇全部原価計算の利益<緑設原価計算の利益となるのは
生産量<売上量 となり在庫量が減少するケース
■問題文から実際に「営業利益」を計算してみる。
【資料】 【第1期】 【第2期】 期首在庫 0個 10個 生産量 110個 90個 ★計 110個 100個 ——————————- 販売量 100個 100個 期末在庫 10個 0個 ――――――――――――――――――――――― 販売単価1.000円 変動費 600円 、固定費33,000円 |
■営業利益の算出
全部原価計算【Ⅰ期】
売上高 100,000円 売上原価 ここで、次期へ10個分 9,300円 営業利益 16,300円 |
全部原価計算【Ⅱ期】
売上高 100,000円 売上原価 ここで、次期へは0円(繰越0) 営業利益 3,700円 |
直接原価計算【Ⅰ期】
Ⅰ売上高 100,000円 Ⅱ変動売上原価(売上100個分) Ⅲ変動販売費 0円(記載なし) Ⅳ固定費 営業利益 7,000円 |
直接原価計算【Ⅱ期】
Ⅰ売上高 100,000円 Ⅱ変動売上原価(売上100個分) Ⅲ変動販売費 0円(記載なし) Ⅳ固定費 営業利益 7,000円 |
■直接原価計算からCVP(損益分岐点)を算出
損益分岐点の売上高=固定費÷(1ー変動費率) ですが、
(1-変動比率)は直接原価計算のキーワードでは「貢献利益」となる。
よって、
損益分岐点の売上高=固定費÷(貢献利益率) で求められる。
=固定費/貢献利益率
本問題の場合、
固定費=33,000円 貢献利益率=40,000/100,000=0.4
よって
損益分岐点の売上高=33,000/0.4=82,500円
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~~~~~~~ ~~~~~~~ ~~~~~~~ ~~~~~~~
H28年度、財務・会計問題のキーワードを掘り下げます。
第9問(1)キャッシュフロー計算書と財政状態
(2)貸借対照表と損益計算書から読み解く財務分析
第10問 直接金融と間接金融
今回はテーマの区切りが良いのでこの2問のみとします。
~~~~~~~ (下記に詳しく続く)~~~~~~~
キャッシュフロー計算書上の表示について
メモ:キャッシュフローについて
>会社の取引で生じるお金の動きの把握を目的としている。営業・投資・財務の3パーツに分けて金の流れを把握 >取引等の活動で、お金の流入を(+)、流出を(-)で集計する。 〈減価償却費は費用として処理しているが、社内に残る金なので(+)と同じ。経常利益にプラスして捉えるもの〉 |
キャッシュフォロー計算書の基本構造
期末キャッシュ残高 = 期首キャッシュ残高 + 期中キャッシュの増減 |
■キャッシュフローを「営業」「投資」「財務」3つに分けて、計算書を構成しています。
1営業キャッシュフォロー(本業で産み出したキャッシュの量)
(+)キャッシュの増 | (-)キャッシュの減 |
経常利益 減価償却費 売上債権の減少(売掛金など) 棚卸資産の減少(商品、製品、原材料など) その他資産の減少(長期前払費用、繰越税金資産など) 仕入債務の増加(買掛金など) その他債務の増加 |
法人税の支払い 役員賞与の支払い 売上債権の増加 棚卸資産の増加 その他資産の増加 仕入債務の減少 その他債務の減少 |
2投資キャッシュフロー
(+)キャッシュの増 | (-)キャッシュの減 |
固定資産の減少(売却など) 有価証券の減少(売却) |
固定資産の増加(購入など) 有価証券の減少(購入) |
■(営業+投資)キャッシュフローをフリーキャッシュフローという
3財務キャッシュフロー
(+)キャッシュの増 | (-)キャッシュの減 |
借入金の増加(借入れ) 社債の増加 配当金の受取り |
借入金の減少(返済) 社債の減少 配当金の支払い |
中小企業の財務分析
中小企業でよく用いられる財務分析
独立行政法人中小企業基盤整備機構が提供の「経営自己診断システム」によると、
中小企業を5つの視点から分析するのに、次のような指標を用いている。
1)収益性:売上高総利益率(売上総利益/売上高)
2)安全性:手元現金預金月商比率(現金・預金/月平均売上高・・・月商何か月分のキャッシュ保有か)
3)生産性:一人当たり有形固定資産額(有形固定資産/従業員数)
4)成長性:総資本回転率増減(売上高/資産 の前後期比較)
5)効率性:売上債権回転日数(「受取手形・売掛金等」/1日平均売上高)
H28年度第9問は、貸借対照表から企業の「安全性評価」を問うもので
中小企業庁HP掲載の下記5項目と、更に1項目の理解度を試している。
安全性評価
①流動比率(流動資産/流動負債)・・・・短期的な運転資金のカバーの可否
②当座比率(当座資産/当座負債)・・・・短期的な運転資金の支払い能力
③固定比率(固定資産/自己資本) ・・・固定資産に投下した資金が返済不要の自己資本で賄えたか否か
④固定長期適合率(固定資産/自己資本+固定負債)・固定資産に投下した資金が長期資金で賄えたか否か
⑤自己資本比率(自己資本/総資産)・・・・高まっていくことが望ましい
⑥正味運転資金(流動資産ー流動負債)・・瞬時の支払い能力を掴む
これを機会に覚えておく財務分析指標とは
1)収益性
①総資本利益率(ROA:当期純利益/総資産)
②自己資本利益率(ROE:当期純利益/自己資本)
2)安全性
前出のとおり
3)資金繰りその他
売上債権回転期間 または売上債権回転率
在庫回転期間 または在庫回転率
実効税率(法人税・住民税・事業税)
(例題)
【H24】
法人税率30%
住民税率15%
事業税率10%
実効税率
={法30%(1+住15%)+事10% }/ (1+事10%)
={法30%+4.5%+10% }/ 110%
=40.45%
【H28】
法人税率23.4%
住民税率15%
事業税率10%
実効税率
={法23.4%(1+住15%)+事10% }/ 1+事10%
={法23.4%+4.5%+10%} / 110%
=34.45%
直接金融と間接金融
「間接金融」とは、預金者からお金を借りて必要な人に貸し出すこと
~銀行・信用金庫などが預金を国や企業、個人に貸し付ける~
「直接金融」とは、お金を必要とする相手に直接お金を出資すること
~株式、債券などで、金融機関の仲介がない ~
~主に証券会社。 銀行が株式を発行するのは直接金融~
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H28年度 1次試験第11問から15問までのキーワード解法です。
第11問 リスク中立的とリスク回避的な投資家 の効用関数
第12問 (1)資本資産評価モデル(CAPM)について
(2)CAPMによる株式の期待収益率
第13問 企業買収に関する略語
①KPI ②LBO ③MBO ④TOB
第14問 加重平均資本コスト(WACC)
自己資本コスト と 他人資本コスト と 限界税率
~~~~~~~ (下記に詳しく続く)~~~~~~~
リスク中立的とリスク回避的な投資家 の効用関数
第11問 効用関数のグラフから、リスク中立的とリスク回避的な投資家の特徴を選ぶ問題
(1)効用関数の意味と(2)リスク回避的と好感的のイメージを掴む
〈メモ〉
(1)効用とは満足度のことと理解する
(2)リスク回避的なのが一般投資家で、中立より少ない富で満足度が高い
リスク好感的であれば、大きな富でなければ満足度は上がらない
以上から、中立的が直線関数となることが分かる。
資産評価モデル(CAPM)
第12問 資産評価モデル(CAPM)の数式におけるβの値の意味について
~ capital asset pricing model ~
実は、複雑な式から導く必要はない β=1が市場全体のポートフォリオと一致することが分かればよい。β=1のとき、CAPM=rm(市場の期待収益率)なので
一方、 β=0ならリスクフリーの市場 つまり国債等のような物ばかり買う市場
式は CAPM=RF+β(rm-RF) RF:リスクフリー(国債を買うなどの時) rm:市場の期待収益率 |
β=1を中心に β>1のとき のイメージを図よりつかむ
CAPMによる株式の期待収益率
資 料よりCAPMを求める
市場ポートフォリオの期待収益率:8 % 無リスク資産の期待収益率:3% β=1.4 実効税率:40 % |
解答群 ア 4.4 % イ 7 % ウ 10 % エ 11.2 % 正解は ウ 10 % |
CAPM= 3% + (8%-3%)×(β=1.4) = 3 + 5*1.4 = 3 + 7 = 10% ☞ この意味は図より明らか |
★CAPMの関連用語
シャープ・レシオ=(ファンドの収益率-無リスク資産の収益率)/ファンドの標準偏差
シャープ・レシオ= 超過収益率/ファンドの標準偏差
= ジェンセンのα/Fのσ
CAPMの創始者シャープ博士が考案した、リスク調整後リターンの評価指標
企業買収に関する略語
KPI(重要業績評価指標 key Performance Indicator)
簡単に言えば企業活動における数値目標のこと
LBO(えるびーおー:レバレッジバイアウト)
企業買収を自分の資金は少なく抑え、金融機関からの借入金を使う方法。
金融機関は買収される会社の将来性(キャッシュフロー)までを担保にとる。
MBO(えむびーおー;マネジメントバイアウト)
サラリーマン社長がオーナーから、自社の株を買ってオーナー社長にならないか的な打診を受けた場合などに、経営陣が自社を買収すること
TOB(株式公開買付)
証券取引所を通さず、買収目的で「株高く買います宣言」をして保有者から買い付ける方法
加重平均資本コスト(WACC)
WACCは理論上
WACC=【他人資本コスト】+【自己資本(株主資本)コスト】 と資本構成上2つに分けられる。
時価で表すが、自己資本は「時価」厳守、他人資本は「簿価でもよい」
WACC=(負債コスト)×(1-t)×(負債比率) +(CAPM)×(資本比率)・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ t:限界税率 CAPM:株主資本コスト |
* 他人資本には(1-t)【1-限界税率】をかけるのは、損金キャッシュアウトすなわち節税効果を考えているから。
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H28年度 1次試験第15問から18問までのキーワード解法です。
第15問 投資案件と予想収益率の連続データ表より
(1)共分散と相関係数について
(2)予想収益率の期待値、分散、標準偏差、相関係数について
第16問 配当割引モデルによる企業価値の推定について
第17問 内部収益率法を用いたプロジェクトの順位付け
第18問 ポートフォリオ理論
(1)無リスク資産が存在しない場合の特徴
(2)無リスク資産が存在する場合の特徴
~~~~~~~ (下記に詳しく続く)~~~~~~~
2つ連続データから相関係数と共分散の値を推測
この問題は、3つの投資案件にたいする予想収益率の関係を問題としているが、本質は2つの連続データ間の相関係数と共分散を求める問題であります。
常識的に
①-1<相関係数<1
②相関係数が「ー」なら共分散も「ー」、即ち「同符号」
から、答えが明らか。
(1)下表のA、Bの相関係数と共分散を選べ
ア(-15,-0.95) イ(-15,0.95) ゥ(15,-0.95) エ(15,-0.95)
【解】①AとBは「負の相関」が強い。「-1」に近い数字
②負の相関係数なので、共分散も「-」となる
以上①②から、アが正解
~本問題を単純化すると下記のようになるが、いちいち計算すると時間がない。
表、もしくはグラフで一目瞭然、直感で解答可。~
① | ② | ③ | ④ | |
A | 2 | 5 | 11 | 14 |
B | 12 | 7 | 5 | 3 |
期待値、分散、標準偏差について
① | ② | ③ | ④ | 平均 | 分散 | 標準偏差 | |
A案 | 2 | 5 | 11 | 14 | 8 | 90/4 | 3√10÷2 |
C案 | 4 | 10 | 22 | 28 | 16 | 360/4 | 6√10÷2 |
第15問(2)は、A案とC案それぞれの標準偏差を求めてCの標準偏差がAの二倍になっていることを確認する問題。(消去法で計算しなくても解答可)
これを機会に
「統計的数量x」について、期待値(平均)、分散、標準偏差の関係
について復習します。
■4つ数量x(X=2,5,11,14)について平均、分散、標準偏差はいくら?
関係式
平均 = (2+5+11+14)÷4 =8
分散 = (36+9+9+36)÷4 =90/4
標準偏差 = √σ = √90/2 =1.5√10
■4つ数量x(X=4,10,22,28)について平均、分散、標準偏差はいくら?
平均 = (4+10+22+28)÷4 =16
分散 = (36+9+9+36)÷4 =360/4
標準偏差 = √σ = √360/2 =3√10
配当割引モデルによる企業価値
現在の株価と配当金から投資家の期待収益率(資本コストという)を推定するもの
基本式 exp(r); r= D/P =配当額/現在の株価 ・・・・①
応用式 r = D/P + q(毎年配当額が増えるとした場合)・・②
【基本式の例題】
現在の投資家期待収益率=r 配当額=D 株式の現在価値=P exp(r); r= D/P r = 0.2 |
【応用式の例題】
現在の投資家期待収益率=r 配当額=D 株式の現在価値=P |
問題16 ②式に代入して解く(この式を頭に入れておく)
投資家期待収益率(資本コスト)=r 配当額=D 株式現在価値=P r = D/P + q 0.05=105/ P +0.03 P=105/0.02 P = 5,250 |
内部収益率法(IRR)によるプロジェクト評価
IRRとは、企業がプロジェクトを実行するにあたって、投資の可否かを判断する指標このと。
正味現在価値NPVをゼロにする割引率(内部収益率)のことをいい、
NPVの累計がゼロになる割引率として求められます。 本問の場合、
0=(-500)+A/(1+r) + B/(1+r)^2 + C/(1+r) ^3 ・・(式①)
通常は、資本コスト(株主配当や借入金の金利などステークホルダーの期待リターン)と比較して利用します。例えば資本コストが4%でIRRが8%であれば、この投資案件は「採択」です。
本問題では3つのプロジェクトのIRR比較をします。
これを単純にグラフ化すると次のようになります。
この投資-キャッシュフローを式①にてIRR値を計算します。
上表を現在価値表示をすると次のようになります。
本問の場合、実はこのような計算は不要です。
表よりすでに ①>③が分かっているので、 ①と② ②と③の比較が出来ればよいことになります。
よって①-② と ③-②のグラフを書いてみます。
結局①と②を比較すると、1期(1年後)の80 と Ⅲ期(3年後)の80のどちらの現在価値が大きいか、という問題に帰着する。
割引を考えると明らかにⅠ期の80のほうが価値が大きいので ②>①となる。
よって、本問の答えは ②>①>③となる。
ポートフォリオ理論と無リスク資産
ここでは、効率的フロンティアがB-D-Cの部分であることを知ることで良い。
【株価ポートフォリオ】の補足
投資のリスクに対処するため、「β:ベータ値」を活用したポートフォリオを作る。(参考:β値はDCF法でも用いる数値)
β値は「市場感応度」といい、「日経平均」や「TOPIX」などの株価指標に個別の銘柄がどう感応するかを示す指標のこと
β値が大きい ⇒ 値動きが大きく、リスクも大
β値=0 なら 「リスク0」
β値=1.5 なら 日経平均が1%上昇するとその銘柄は1.5%上昇し、1%下がると1.5%さがる(リスクが大)
β値=0.5 なら 日経平均が1%上昇した時、銘柄は0.5%しか上昇しない(リスクが小)
β値=▲1 なら 日経平均が1%上昇した時、銘柄は1%逆に上昇し、1%上がると▲1%と下落する
β値=▲1.5% でも 逆の動きをする(リスク大)の銘柄となる
よって
ベータ値が「+」と「-」を組み合わせてリスクの低減を図る
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