★「経済学・経済政策」解法のポイント
全部で23問あり、これを60分で解くので、一問あたり2~3分の時間配分となります。
従って、1~2分でサッと解いてみて、30分でもう一度見直す、という回答方法がよいでしょう。
平成28年度の経済学・経済政策のキーワード
キーワードを簡単に解説すると、次のようになります。
問1 GDPとGDPデフレータについて
問2 各税収の推移
問3 実質実効為替レート
問4 国内総生産と国民総所得、国民純生産の関係
問5 消費者物価指数、コアCPI、ラスパイラス指数
問6 効率賃金理論と均衡賃金
問7 デフレーションと実質利子率、実質価値と実質・名目賃金、下方硬直的とはどういう意味か?
問8 総需要A=C+I+G 消費C=Co+cY 所得のグラフと政府支出係数
問9 伝統的な加速度原理 生産性と投資の関係
問10財政のビルトイン・スタビライザーの機能
問11 財政・金融政策
問12 需要曲線と需要量・価格(医療費抑制による変化)
問13 需要の価格弾力性(価格の低下と需要量の変化)
問14 需要と供給、蜘蛛の巣理論、ワルラス・マーシャル的調整
問15 所得一定の場合の予算制約線、財1と財2の量的な関係
問16 所得一定の場合の需要想定、無差別曲線、ギッフェン財、粗補完財
問17 合理的な企業の生産活動における私的限界費用、社会的制限費用
問18 地球温暖化防止のためのCO2排出量削減対策
問19 コメと豚の最適生産量(2人の場合の配分)を表とグラフで
問20 生産活動におけるグラフで、投入量と生産量の関係
問21 投入量と生産量のグラフで、利潤線を加えた時の利益最大化
問22 企業誘致における産業分類(収穫逓減・逓増、費用低減)と各経済メリット
問23 需要曲線と限界収入・費用曲線から、生産量と価格の変化を読み解く
◆ キーワード の 解説 |
■H28:一次試験から抽出したキーワードについて、ショートコメント(A-1)
第1問 日本と米国の「実質GDP」と「GDPデフレータ」の推移
第2問 所得税、法人税、所得税について、各税収の推移
第3問 円、人民元、米ドルの実質実効為替レートの推移
第4問 国内総生産と(自家消費、帰属家賃、外国人所得)、市場価格表示の国民所得と国民総所得、要素費用表示の国民所得と市場価格表示の国民純生産
第5問 消費者物価指数、消費税等間接税、コアCPI、ラスパイレス方式
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GDPとGDPデフレータ
実質GDP(物価変動除く)とGDPデフレ-タ(名目÷実質)の推移グラフ
「各税収の推移」
~財務省資料より~ (単位:兆円)
年度 | H19 | H20 | H21 | H22 | H23 | H24 | H25 | H26 | H27 |
1位 | 所16 | 所15 | 所13 | 所13 | 所14 | 所14 | 所16 | 所17 | 消17 |
2位 | 法15 | 法10 | 消10 | 消10 | 消10 | 消10 | 消11 | 消16 | 所16 |
3位 | 消10 | 消10 | 法6 | 法9 | 法9 | 法10 | 法11 | 法11 | 法11 |
記事 | リーマン
の翌年 |
消費税は景気変動少ない法人税は景気変動大きい法人税減税の効果? | 消費税8% | 法人税減税が相殺効果 |
実質実効為替レート
「米ドル、ユーロ、フランなどど比べた国際的な相対評価での為替レート
日本:2000年以降、名目為替レート=ほぼ100円に対し、
ずっと減少傾向で、名目と実質との乖離が進み、 現在=70円(2015)→80円(2016) 程度の円高
人民元: 2010を100とした場合、2015年には130となって、過去最高水準
米ドル: ドル高傾向が続いている
国内総生産と国民総所得、国民純生産の関係
国内総生産(GDP)に含まれる意外なものに「自家消費」、「帰属家賃」がある。 日本国内居住の外国人所得も含まれる。
自家消費とは ・・・・・・・ 農産物の商品取引額ではなく、自分で食べた分の商品換算額 帰属家賃とは ・・・・・・・ 持ち家の貸家にした場合の家賃相当額 |
*国内総生産(GDP)は市場価格表示
→ 市場で取引される価格で表示 つまり「税込み」という事
*GDPとGNP(国民総生産)又はGNI(国民総所得)の関係
現在GNPの代わりにGNI(国民総所得)を用いるので、次の関係を覚えておく。
GNP(国民総生産)= GNI(国民総所得) |
GDPとGNP、GNIの関係 GDP(国内総生産)= GNI(国民総所得) - 海外からの純要素所得 GDP(国内総生産)= GNP(国民総生産) - 海外からの純要素所得 |
国民純生産(NNP) ={(GNP)または(GNI) }- 固定資産減耗 |
国民所得(NI) =国民純生産(NNP) - 間接税 + 補助金 |
国民所得(NI) = GNI - 固定資産減耗 - 間接費 + 補助金 |
GDPの三面等価
分配面から見たGDP
+雇用者所得 【外国人含む国内の従業員所得、直接税を含む】
+営業余剰 【経営者や株主の所得、直接税を含む】
+固定資本減耗 【生産設備の摩耗減に当てられた収入】
+間接税
▲補助金 【企業の収入で配分から差し引く】
支出面から見たGDP
+民間最終消費支出 【個人・企業の財・サービスの消費支出】
+政府最終消費支出 【公務員給料、補助金など政府の支出】
+総固定資本形成 【企業の支出が形となったもの】
+在庫品増加 【企業の支出のストック】
+輸出▲輸入 【海外の人たちの消費支出】
生産面から見たGDP
+国内での経済活動による全ての稼ぎ【国内在住の外国人は含む、海外日本人含まず】
消費者物価指数、コアCPI、ラスパイレス指数
消費者物価指数とは? 特徴を列挙すると
- 基準時を5年ごとに改定
- 重要度の高い商品(指定品目)538品目を選んでいる
- 価格変動を代表できるものを選んでいる
- 「家計調査」で消費者が実際に記入したものから選んでいる
- 間接税(消費税等)は含み、直接税(所得税、住民税等)は含まない
- 土地購入は含まない
- 持家は家賃相当額(帰属家賃という)を入れる
- 商品の割合に応じ「ウエイト」をつけて調整している
- 価格調査は毎月実施している。
- 必要に応じて調査銘柄の変更を行っている
- 消費者物価指数は「ラスパイラス式」という計算式で作られる
- 物価指数は毎月26日を含む金曜日に公表
コアCPIは、天候に左右されやすい「生鮮食料品」を除くもの
コアコアCPIは、食料(酒類除く)とエネルギーを除いたもの
但し、コアCPI コアコアCPI とは、正式名称ではないことに留意しておく。
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■H28:一次試験から抽出したキーワードについて、ショートコメント(A-2)
第6問 効率賃金理論 均衡賃金
第7問 デフレーション 実質利子率、実質価値、実質・名目賃金、下方硬直的
第8問 総需要A=C+I+G 消費C=C0+cY 所得のグラフと政府支出乗数、租税乗数
第9問 伝統的な加速度原理 生産量と投資の関係
第10問 財政のビルトイン・スタビライザーの機能
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効率賃金理論 と 均衡賃金
*効率賃金とは「均衡水準以上の賃金」のこと 労働者の生産性向上になる。
*均衡賃金とは、市場全体で雇い主と従業員の希望がバランスする賃金
〈適度な効率賃金が生産性を向上する〉
* 均衡水準以上の高い賃金
⇩
* 健康で生産性の高い従業員確保
⇩
*効率経営で利潤増
(但し、労働効率性が高まると、労働者削減で失業リスク発生)
デフレと名目賃金の下方硬直性について
デフレ下で物価が下がっているのに、名目賃金が下がらない(下方硬直性)と実質的に賃金は上がっているのと同じ。
Q デフレ下では消費は抑制されるのか?
A 実質賃金が上がっていれば消費は増える。(但し、倒産企業・失業増えればマイナス要素)
A 保有資産の実質的価値が上がり、売却等で資金の余裕が消費に回れば、消費は増える。
総需要と所得のグラフ A=C+I+G の問題
受給均衡式
総需要A= 国民消費C + 民間投資I + 政府支出G において
消費C= C0 + C1・所得Y の時 【限界消費性向0<c1<1】
【C0は収入が無くても消費する独立消費】
総需要A=総所得Yとなる均衡所得を考え、この時右辺の所得Y=Y+T税と置き換える
Y=C0 + C1Y +C1T + I + G
(1-C1)・Y=C1T + (c0+I+G) C1=0.8の時
Y=4T +5(c0+I+G)
【Tの乗数は4 Gの乗数は5】
投資の増加と加速度原理
投資理論
❶ケインズの限界効率理論 (主流)
☞ 利益率が良ければ、その案件に投資する。
❷加速度原理 (伝統的)
☞ 投資量は生産量(GDP)の増加分に比例する。
ビルトインスタビライザー(自動安定化装置)
財政の経済安定化機能について
(1)ビルトインスタビライザー(自動安定化装置)
税制・社会保障制度によって自動的に誘導する景気対策のこと
①「景気過熱時」→ 累進課税等により市場から貨幣を回収し、景気を減速
②「景気低迷時」→ 減税し、給付を増やすなどをして、景気を回復
(2)裁量的財政政策
ビルトインスタビライザーだけに頼らず、臨機応変な政策として、公共事業等の景気対策を実施
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■H28:一次試験から抽出したキーワードについて、ショートコメント(A-3)
第11問 財政・金融政策 IS-LM分析(利子率とGDP)、限界消費性向、利子弾力性、マネタリーベース
第12問 医療に対する需要曲線 医療費抑制 需要量 価格 ☞【省略可】
第13問 需要の価格弾力性 価格の低下と需要量の変化
第14問 需要曲線と供給曲線 蜘蛛の巣理論 ワルラス・マーシャル的調整
第15問 所得一定の場合の予算制約線、財1と財2の量の関係 ☞【次回】
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IS-LM分析(利子率とGDP)
財政・金融政策の効果判断としての「IS-LM分析」のいろいろ
まずは「用語」
IS-LM分析 ~[Investment & Saving ] – [Liquidity & Money ]
【IS】は財市場(投資と貯蓄のバランス)
・利子率と国民所得(ザクッとGDP)の関係式で示す ⇒「物価一定・海外部門なし」
・投資は利子率の減少関数
・【r】=-(1-β)/b【Y】 + (α+I+G)/b ・・・・・・①
【LM】は貨幣市場(貨幣需要量と供給量のバランス)
〈H28年のテーマ〉
(1)IS曲線はr(利子率)=▼Y(国民所得)+■のグラフ
・「限界消費性向大ならIS線の傾きが緩」を知る
(2)IS曲線のシフト ☞ 政府の景気刺激策で政府支出増なら、ISは右シフト
(3)LM曲線の右上がり☞利子率上昇→債権上昇を予想し貨幣より債権保持へ動く→貨幣の投機的需要↓(取引需要↑)→取引需要↑でGDP(国民所得)は右上がり
限界消費性向
・もし突然1万円Getしたら、その内いくら使うか、と考える
☞使わない=0 全部使う=1 (0<限界消費性向<1)
★限界消費性向(大) ☞①式のYの勾配-(1-β)が小さくなり、ISの傾きは緩やか
・限界消費性向(小) ☞①式β=0の時 r=-1/bY+■ でISの傾きは急(-1/ b)
・ここで、利子率↓なら投資↑で国民所得(ザクッとGDP)↑
★政府の景気刺激策で政府支出Gが増えると、【r】の切片がシフト(ISのグラフは右シフト)
利子弾力性(投資は利子率の関数と定義)
・貨幣需要の利子弾力性 ☞ 利子率1%変化で 貨幣需要が何%変化? ☞「LM曲線の傾き決める」
・投資の利子弾力性 ☞ 利子率が1変化で 投資の動き大 (利子弾力性大)
・利子率が低下すると投資が増加 総需要が増加 GDP(国民所得)増加
マネタリーベース(金融政策はLM曲線をシフト)
マネタリーベースとは、「日銀が発行する現金の量」のこと
M=市場の「流通資金」+日銀当座預金(民間金融機関の中央銀行預け金)」
マネタリーベースを増加させるとLM曲線は左シフト
よく似た言葉のマネーサプライとは「市中に流通する現金預金の合計で、日銀黒田総裁は「マネタリーベース」を2倍にするといったが、マネーサプライを増やすとはいっていない。
マネーサプライという金融政策でもLM曲線は右シフトする。また金利も下がる。
LM曲線の右シフトで金利が下がり、均衡金利に戻るにはIS曲線の右シフト、即ち輸出増大によるGDP増大に繋がる
(参考)クラウディングアウトと流動性の罠
(1)クラウディングアウト :国債発行など政府支出を増したのに、金利がアップしすぎると民間銀行の金利まで上がり、民間設備投資が引っ込んでしまうこと。
(2)流動性の罠 :利子率がゼロ近くまで低下すると、通常の金融政策がきかなくなる状況、タンス預金が増え、投機的需要が無限大になる。
需要の価格弾力性
価格によって、需要がどれくらい変動するかの割合のこと
需要の価格弾力性=|(需要の変化率)/(価格の変化率)|・・・式①
① >1 ・・・ 弾力性が大きい
① <1 ・・・ 弾力性が小さい
需要曲線と供給曲線 蜘蛛の巣理論 ワルラス・マーシャル的調整
蜘蛛の巣による調整
ワルラス・マーシャル的調整
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平成28年度 経済学・経済政策問題の最終回
~~~~~~~ 第20問から23問まで ~~~~~~~
第20問 生産活動において、投入量と生産量の関係のグラフを読み解く
(平均生産物と限界生産物の関係)
第21問 同、投入量と生産量のグラフに、利潤線を加えて「利益最大化」を読み解く
第22問 自治体への企業誘致に関して、企業を評価する
(収穫逓減産業、収穫逓増産業、費用逓減産業)
(範囲の経済、規模の経済、集積の経済)の各参入メリット
第23問 寡占市場における生産量と価格のグラフ
需要曲線と限界収入曲線・限界費用曲線から生産量と価格の変化を読み解く
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無理関数(√x)で表される生産関数の特徴
1つの生産財を生産する企業の生産関数が√xで表される時、
要素投入量と「平均生産物」(Y/X)と「限界生産物」(dy/dx)の大小はどうか?
これは図を見れば明らか
x1における接線の傾きY’<(Y/X)x=x1 は明らか。
また、√関数はx→増加につれてY/Xは小さくなる(傾きが緩やか)
利潤π=py-wx(生産関数√x)の時の利益最大化
同じく、上グラフより、 π=py-wx を変形し、 y=(π/p)+(w/p)x とした時
切片π/p>0 で 傾きw/p>0が明らかだから、上グラフのように、Y=a√xに接する直線の接点が「企業の利潤最大化」を示す。
収穫逓減・収穫逓増産業、費用逓減産業としての企業特性
「収穫逓減の法則」が当てはまるのが一般的な企業。 店舗出典などは条件の良い場所から新設していくので、後になれば不利な場所が多くなる。
「収穫逓増の法則」は、ニューIT企業などが唱えている。 例えば携帯電話の利用者が増えれば増えるほど、それを活用したITビジネスが広がる「規模の経済」を享受するなど。
費用逓減産業とは?
初期投資額が大きく、生産を増加するほど費用が減少する産業。公共的な産業(交通、電気、ガスなど)がこれに当たる。 よって、中小企業ではない。
公共的な性格から、価格規制や補助金などで、適切に市場を誘導する必要が出る。
「屈折需要曲線」で表される寡占市場で、限界費用曲線のシフトは価格にどう影響するか?
寡占状態で利潤最大化を目指す企業が、「屈折需要曲線」で表される寡占市場においては、屈折した2つの需要曲線の境目で、それぞれに対応した2つ限界収入曲線が「不連続」になる、という特徴がある。
すなわち、「すき間」が開く。
この意味は、限界費用曲線が変化しても、あるいは他社が値上げしようとしても、価格を据え置くという現実の企業の対応を示しているポイントだということ。
よって、「屈折需要曲線」のグラフを見たら、
☞「消費量と価格は変化しない」 という特性を覚えておくこと。
下グラフ参考 ・・・・・・( H28年度の経済学・経営政策は以上)
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